世界初の挑戦!
車内への紫外線を360°ブロック。
〈後編〉
「車を長時間運転したら、片腕だけ日焼けしていた…」「日差しの強い日は、車の窓ガラスを閉めていてもジリジリと熱さを感じる…」といったお悩みをお持ちの方も多いと思います。そんな車内での日焼けや熱さを防ぐために挑戦をつづけているのが自動車用ガラスで世界No.1のシェアを誇るAGCです。今回は、AGCオートモーティブカンパニーの宮川博行さんと黒川みどりさんに自動車用ガラスにおける最前線のUVカット技術についてお話を伺いました。
AGC独自の紫外線吸収膜で
99%UVカットのフロントドアガラスを実現。
――99%UVカットのフロントドアガラスの開発では、どのような課題があったのですか。
黒川さん:フロントガラスのように合わせガラスにすれば99%UVカットは達成できますが、重量や厚みが増してしまいます。また、ガラス組成自体で99%UVカットを達成しようとすると、ガラスの色味が変わってしまい、法令で定められた可視光透過率70%以上というフロントドアガラスの性能をクリアするのが困難になります。それでは、有機系の紫外線吸収材料を使用した膜でコーティングしてはどうかと言うと、今度は膜の耐久性の確保が難しくなるという課題がありました。特にドアガラスは昇降するので、耐久性に対する要求度が非常に高くなります。
――どのような技術で課題を解決したのですか。
黒川さん:AGCグループは、ガラスという事業分野だけでなく、化学品などの事業で培った多岐にわたる技術を融合し、新たな価値創造に挑戦しています。今回の課題に対しては、無機材料技術と有機材料技術を駆使し試行錯誤を重ねることで、ドアガラスを昇降させても摩耗しにくい有機・無機ハイブリッドの紫外線吸収膜を開発し、これを従来のUVカットガラスにコーティングすることで99%UVカットを達成したのです。
99%UVカットのフロントドアガラス「UVベールPremium」は2010年12月に発売となり、2019年6月現在、当社が国内の新車に供給しているフロントドアガラスのうち、約半数に採用されています。「UVベールPremium」を使うことで、市販のアームカバーとほぼ同程度、日焼け止めで言えばSPF50+/PA++++相当(*2)の効果が期待できます。また、2012年12月には、99%UVカットに加え、日射しの熱さやジリジリ感の原因となる近赤外線もカットするフロントドアガラス「UVベールPremium Cool on」を発売しました。
世界初!
全周99%UVカットを達成。
――フロントドアガラスの99%UVカットを達成した後は、どのような取り組みを。
宮川さん:フロントガラスに加え、フロントドアガラスも99%UVカットとなったことで、運転席と助手席は紫外線をほとんど気にせずにご乗車いただけるようになりました。しかし、再度ドライバーへのインタビューを実施したところ、特に小さなお子様がいらっしゃる方の多くが「子どものために後部座席も99%UVカットにしてほしい」と考えていることが分かったのです。
そこから99%UVカットのリアドアガラス・リアガラスの開発がスタートしました。当社では、従来のプライバシーガラスの成分を調整することにより、プライバシー性を保ちながら99%UVカットと高性能な赤外線吸収機能を実現することに成功。2015年11月に「UVペール Premium Privashield(プライバシールド)」の発売を開始し、これにより世界初の「全周99%UVカット」を実現したのです。
――今後の目標をお聞かせください。
黒川さん:「全周99%UVカット」を実現したことで、紫外線対策という観点からの製品開発は一区切りついたと考えています。今後は、例えば不快な音や眩しさなど車内で発生するさまざまな環境ストレスに対し、自動車用ガラスという分野からアプローチすることで、車内における環境ストレスの軽減に寄与していきたいと考えています。