「紫外線防護」の観点から
宇宙ミッションの遂行を支える!
〈後編〉

このコーナーでは、紫外線や赤外線、大気汚染などの環境ストレスに立ち向かうために、各界で挑戦をつづけるプロフェッショナルや企業、いわばオールジャパンの挑戦をご紹介します。

真空の宇宙空間において
材料が黄変するメカニズムを解明したい。

――宇宙空間における紫外線防護について、JAXAではどのような取り組みを行っていますか。

黄変が生じるのは主に高分子材料です。JAXAは宇宙空間を模擬した紫外線照射技術を有しており、宇宙機に使われる材料が宇宙空間で紫外線にさらされつづけたときにどのように黄変するかを明らかにする実験を行っています。同時に、黄変を防ぐための方法の研究も進めています。

――行松さんは現在、どのような研究に注力しているのですか。

紫外線にさらされることで材料が黄変することは分かっていますが、そのメカニズムについては未知の部分が多く、例えば酸素がある地上と真空の宇宙空間では紫外線によって黄変が生じるメカニズムも違うはずです。宇宙空間で紫外線にさらされたときに材料の物性がどのように変化して黄変を生じるのか――、そのメカニズムを解明する研究に取り組んでいます。

行松さんは現在、紫外線による黄変のメカニズムを明らかにする研究に取り組んでいる

宇宙機が無事にミッションを達成する。
それを支えるのが私たちの使命。

――黄変のメカニズムを解明できたら、宇宙機の開発などにどのように役立つのでしょう。

仮に、宇宙空間に300日間滞在する人工衛星を製造するとしましょう。製造する側からすれば、300日間でどれだけ材料が黄変するかを調べるために、地上の実験においても300日間紫外線を照射したいと考えますが、そうなるとお金も時間もかかります。

しかし、例えば材料にこの因子が含まれているとこれだけ黄変するというメカニズムが分かっていれば、300日間紫外線を照射しなくてもある程度予測ができるようになるのではないかと考えています。さらに、この因子が黄変を引き起こすということが分かれば、そもそも最初からその因子を排除することで紫外線に強い材料をつくるということも考えられます。

――宇宙機開発の効率化が図れるわけですね。

1つはそうですね。しかし、いちばんの目的は宇宙ミッションの遂行を支えることです。人工衛星や探査機などの宇宙機は、それぞれのミッションを遂行するために宇宙空間に行くわけです。それらの宇宙機が過酷な環境下でも定められた期間不具合なく稼働できるように、そしてミッションを達成できるようにすることが私たちの使命だと思っています。

宇宙機のミッション達成に貢献したいと行松さん。写真は、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)
(C)JAXA

――夢をお聞かせください。

自分が研究開発した材料が、いつか宇宙機の材料となって宇宙に行ったらとてもうれしいですね。まだまだ勉強不足な部分がたくさんありますので、大きな目標を目指して努力をつづけていきたいと思います。

――紫外線に立ち向かうための研究は、宇宙開発においても非常に重要だということを実感しました。ありがとうございました。

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構
研究開発部門 第一研究ユニット 研究開発員
行松和輝さん
2017年、大阪大学大学院工学研究科博士前期課程(環境・エネルギー工学専攻)修了。同年、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構に入社。現在に至る。
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