東京
2019
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26.33
UV指数 6
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WHO : Global solar UV index-A practical guide-2002

オールジャパンで環境ストレスに挑む 第2回

紫外線や大気汚染などのさまざまな環境ストレスは、私たち人間の暮らしや経済活動の産物とも言えるものです。
だからこそ、私たちは環境ストレスを悪者扱いするだけでなく、環境ストレスとともに生きていくための智慧を身につける必要があるのではないでしょうか。
このコーナーでは、環境ストレスと人間のよりよい共存を目指し、各界で挑戦をつづけるプロフェッショナルや企業、いわばオールジャパンの挑戦を紹介します。
環境ストレスとともに生きていく――。
そのためのオールジャパンの挑戦はすでにはじまっています。

裸の状態で日焼け止めを全身に塗り、それから洋服を着るべし!

――日焼けに対するアスリートの意識は変わってきていますか。

変わってきていますね。女子サッカーの選手たちはリーグ発足当時、紫外線の影響など気にしていませんでしたが、今ではちゃんと日焼け止めを塗っています。「日焼け止めを塗ると体がほてらないし、疲れも少ないので、頭のてっぺんから足の先まで塗っています」と言ってくれた主力選手もいましたね。その他の屋外で行う競技でも多くの選手が日焼け止めを使っています。「日焼け止めを塗ったほうが楽」だと実感してくれたのでしょう。

――その他、日焼け止めの効果として期待できることはありますか。

これは高校生のラグビー部の例ですが、日焼け止めを全身に塗って練習したところ、前年よりも熱中症になる生徒が減ったという報告があります。また、ラグビーは擦り傷や切り傷が絶えず、それが原因で蜂窩織炎(ほうかしきえん)という皮膚の感染症になることも多々ありますが、日焼け止めを全身に塗ったことで免疫力の低下が防げたためか、蜂窩織炎も減ったという報告もありました。

日焼けに対するアスリートの意識は確実に変わってきていると言う

――先生がアスリートに推奨している日焼け止めの塗り方は。

10年ほど前からは、顔だけでなく脚や腕など肌を露出している部位には必ず日焼け止めを塗るように指導しています。塗り方としては、裸の状態で全身に塗り、特に腕や足など洋服から出る部分にはたっぷり塗って、それから洋服を着るようにと言っています。こうすると洋服も汚れないし、洋服と皮膚との境目もきれいに塗れるので一般の方にもおすすめです。

皮膚をいたわることは心と体をまるごと慈しむこと。

――先生は「スキンケアは肌のケアだけでなく、心のケアでもある」とおっしゃっていますね。

皮膚の調子が悪いときは、心の調子もよくないことが多いんです。例えば、アスリートでもニキビがひどいときは、成績も振るわないということがよくあります。そういうときは、思わぬところでケガをしないように、体が疲れていないか心が弱っていないか、自分自身を振り返ってみてねと選手に伝えています。

皮膚の調子が悪いときは、体や心が疲れていないか振り返ってほしいと上田先生

――皮膚をいたわることは、自分自身を大切にすることにつながるんですね。

もちろんです。皮膚は「人体で最大の臓器」ですから体全体のコンディションを反映するとともに、私たちの生命を外界から守る重要な役割を果たしています。その皮膚をいたわることは、自分自身とのスキンシップであり、自分の心と体をまるごと慈しむことでもあると思います。

上田由紀子さん
医学博士、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1976年、東京大学医学部卒。同年、東京大学医学部皮膚科教室に入局。1984年、千葉県浦安市にニュー上田クリニック開業。2001年、国立スポーツ科学センター医学研究部皮膚科を兼任。得意分野はスポーツ医学における皮膚科分野、子どもの皮膚疾患など。主な著書に『スポーツと皮膚』(文光堂)、『ようこそこれからのスキンケアへ』などがある。
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