東京
2019
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UV指数 6
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WHO : Global solar UV index-A practical guide-2002

オールジャパンで環境ストレスに挑む 第1回

紫外線や大気汚染などのさまざまな環境ストレスは、私たち人間の暮らしや経済活動の産物とも言えるものです。
だからこそ、私たちは環境ストレスを悪者扱いするだけでなく、環境ストレスとともに生きていくための智慧を身につける必要があるのではないでしょうか。
このコーナーでは、環境ストレスと人間のよりよい共存を目指し、各界で挑戦をつづけるプロフェッショナルや企業、いわばオールジャパンの挑戦を紹介します。
環境ストレスとともに生きていく――。
そのためのオールジャパンの挑戦はすでにはじまっています。

「たかがタコ、されどタコ」。アスリートと皮膚の密接なカンケイ

皮膚科専門医、スポーツドクターである上田由紀子先生

――先生がスポーツ医学に関わるようになったきっかけはなんですか。

1984年に新浦安にクリニックを開業した頃、大学の同期で、日本代表選手団本部ドクターとしてトップアスリートを支えていた川原貴さん(元国立スポーツ科学センター長)から声をかけていただき、選手たちの皮膚疾患の治療や予防について相談にのるようになりました。その後、トップアスリートをサポートする国立スポーツ科学センター(JISS)が2001年に設立され、皮膚科の分野で役に立てればという思いから同センターに参加したんです。

――アスリートにはどのような皮膚疾患が多いのでしょう。

選手たちからよく相談される皮膚疾患には、蕁麻疹、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎などがあります。これらのアレルギー性皮膚炎には、原因となる食品や物質がはっきり特定できる場合もありますが、疲れや緊張といった精神的ストレスが原因の場合もあります。また、種目に関わらず、慢性的なマメやタコの予防に関する相談も多いですね。

――アスリートにとって皮膚を良好に保つのは大切なことなんですね。

「たかがタコ、されどタコ」とでも言いましょうか。ほんの小さなマメやタコでもそれが痛くて集中できないというように、皮膚疾患があるとどうしてもパフォーマンスが落ちてしまう。逆に皮膚をよい状態にすることでパフォーマンスも上がる。アスリートにとって、皮膚の問題はとても重要なのです。

高校野球選手の皮膚トラブルの実態調査も実施し、
競技力向上や健康管理に役立てている

紫外線をたくさん浴びると、パフォーマンスも免疫力も低下する。

――直射日光を浴びる屋外競技では、日焼けも大きな問題です。

太陽光には人の心を明るくする、ビタミンDを生成するなどの利点がありますが、皮膚に関しては紫外線による害のほうが大きいのです。紫外線をたくさん浴びると体が疲れ、パフォーマンスが落ちてしまいます。免疫力も落ちるため、ヘルペスなどの病気が出やすくなります。しかも、日焼けで体がヒリヒリしている状態ではマッサージが受けられず、疲労が残ることにもなります。

――日焼けはパフォーマンスにも影響するんですね。

その通りです。いまから20年ほど前、アスリートは日焼けしているのが当たり前という時代に、アーティスティックスイミング(旧シンクロナイズドスイミング)では日焼け対策について高い意識を持っていました。日本では屋内競技ですが、海外の大会は屋外プールで行うことも多く、日焼けで肌が褐色になると演技が小さく見えるそうなんです。そんなふうに、日焼けとパフォーマンスについては実際に競技をしている方たちから教えてもらうことも多いですね。

上田由紀子さん
医学博士、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1976年、東京大学医学部卒。同年、東京大学医学部皮膚科教室に入局。1984年、千葉県浦安市にニュー上田クリニック開業。2001年、国立スポーツ科学センター医学研究部皮膚科を兼任。得意分野はスポーツ医学における皮膚科分野、子どもの皮膚疾患など。主な著書に『スポーツと皮膚』(文光堂)、『ようこそこれからのスキンケアへ』などがある。
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